CTO15年やってみた (その1かも)

とても久しぶりのエントリになります、グリー株式会社でCTOをやっておりますふじもとです。Pixel Budsを買ったはいいものの、イヤフォンの位置なおすたびにジェスチャ認識されて通知読み上げられることに悩んでいます。たぶん耳にちゃんとフィットしてないのが原因です。

気がつけば、今年でCTOというタイトルでお仕事をしてはや15年が経ち16年目に突入しておりまして、よい機会なので今どんなことを思うか、何が変わったか、などなど勢いで書いてみようと思った次第です...というそれっぽい理由はほんの少しで、ほんとのところそんな立派な理由でもなく、来たる 2020/09/18 (fri) に GREE Tech Conference 2020 (online) が開催されるので、その宣伝をしたいなーと思ったのです。ということで...!

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これはなにか、あるいはなにではないか

とはいえ、前述の「こんなことを考えている」とかを書きます、というのはウソではなく、思うところを書いてみようかと思ってはいるのですが、たぶんポエムっぽい内容になることが想定されます、というかポエムですねこれは。ので、いわゆるCTOとは、とか、よりよいCTOとなるためのセオリーだとかそういうことは多分あんまり書きません。そもそもぼくより優れたCTOのかたはたくさんいらっしゃるでしょうし、会社としても現状十分満足するくらい成長できているかといったらまだまだでそんな偉そうなこと言えないし、昔...と違ってわざわざ僕が書かなくてもだいぶそういうお話も増えてきましたし、そもそもぼくこの会社でしかCTOしてないので、他の方の役に立つというか再現性があるかどうかとかもわからないですし。

ただまぁ、(それがいいことかどうかはさておき) 1つの会社で15年もCTOやったひと、という方は現時点ではそこまでお見かけはしないので、なるほど長いことやるとそういう感じなのね、という何かの参考にはなるかもしれません、くらいで捉えていただければと思う次第です。

でもって、これは120%個人的な目的ですがこうしてエントリとして残しておくことで、数年後にまた自分でも振り返れますしね (そういう意味では、まだまだ未熟もいいところだったなーと思いつつ過去のエントリは書いておいてよかったなーとは思うのです、みなさまにとってよかったかどうかはともかく)。しかしあれもう6年半くらい前か...。6年半後ぼくなにしてるんだろうなー。

前置き長いですねすいません、以下、お暇なときにでもご覧ください。

なんかいろいろよくわからなくなってきた

いきなりわけわかんないこと言いますが、CTOについて最近またよくわかんないなー、と思うことが多いです。多分いわゆるダニング・クルーガー効果でよくでてくるあのグラフ的に、そういう時期なんだろうな、と自分では思い込むことにしていますが。

とりあえず経歴だけは長いので、あれこれご相談をいただくことも多く、一応出来る限りはアドバイス的なことをさせていただいていたりはして、そういったところでお話することが間違ってるとも思わないですし、なんかめっちゃ迷走してパフォーマンス落ちてる、とかでも多分ないとは思っているのですが (まぁこれは社員のみなさまが判断することですけど)、いわゆるCTOとは、とかそういうコンテキストで語られることが、できてるかどうかはさておきまぁだいたい血となり肉となりましたね、ってなったときに「あれその先は?」みたいな感じになっている昨今です。

もちろん世界中に多くの優れたCTO (あるいはCEOだったりもしますが) の方々がいて、そういった方とお話する機会もあれやこれやあったりもするんですが、そうやって限られた時間で話をしている限りでは、「ですよね...!」とかがほとんどで、いやなんかおこがましいことを言っている感が半端じゃなくありますが、結局のところみなさま「当たり前のことをちゃんとやる」みたいなことにたどり着いている気がしておりまして。なのでぼくも、きちんと考えてきちんとやる、みたいなことを意識はしているんですが、んー、これでいいんだっけ?もっともっと先にいくためには自分はなにをしなきゃいけないんだっけ、みたいなことをめっちゃもやもや考えている日々が続いております。が、なかなか似たような境遇の先輩的なひともいないので、また最近あちこち直接関係ないような業種、職種の先人の経験を観察しているところです。

...などと書くと、特に社内から「おいおいこいつ大丈夫か」と思われる気がしますが、おしごと、という意味ではちゃんと以前よりはうまくできるようになっている、なり続けている、とは思いますたぶん。ので、とりあえずご安心ください (ダメならダメって言ってくださいねー)。

ちょっと長いスパンでものを考えるようになってきた

これは年齢のせいなのか (現在41)、長くCTOをやってきたせいなのか、はたまたインターネット業界あるいはソフトウェア業界の変化や成熟のせいなのかはわかりませんが、20代の頃よりも長い期間で行先を考える、短期的にスピードが遅くてもきちんとそこへたどり着く、みたいなことを重視するようになってるなー、と思います。

それこそ10年、20年前は1ヶ月、3ヶ月、というような期間で何は無くともそこまで全力で走る、その先はそのタイミングでまた考える、そうやって素早く動くことこそが何より大事なのだ、という生き方、仕事のやりかたを重視していたような気がするのですが、特にここ数年は、3年後、5年後のビジョンをできるだけクリアに持って、急がないかもしれないけど可能な限り正しい道をきちんと進んでいく、みたいな方向で物事を考える、進めることを意識するようになりました。

念のためですがこれは以前のやりかたを否定するものでは全くないですし、ゴールを中長期においても当然1日、1週間、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月...と短い期間でのマイルストーンをおくのはもちろん必要です。

なんでこうなったんだろうなー、という点については、前述の通り業界のありかたの変化、周りで働いているひとからの影響 (特に人生の先輩)、以前と同じ戦いかたをしていては競争優位がないのではないか、などなど考えられますが、まぁきっといろいろです。が、いずれにせよ、今はこのやりかた(?)を大事にしようと思っています。それは、ものすごく広義でのマネージメントのお仕事はなんにせよ、ゴールを決めて、あるいは合意して、そこにチームをたどり着かせる、ということが大きな割合を占めるわけでして、で、それにを上手にできるようになるためには、勉強と、そして経験が必要です。勉強はがんばるとして、経験、のほうについては、どうしても時間がかかります。そしてそれはゴールの距離が遠ければ遠いほど、やりたいことが大きければ大きいほど難易度が上がり、そして経験の機会は少なくなります。ということで、そういうことができる機会は貴重なものだなーと思ってがんばることにしております。まぁそもそもマネージメント、というのものをそうまでしてやりたい人生なのか、とかもあったりはしますが (かといって特にいやいややっているわけではございません、と申し添えておきます)。

 (1社で) 長く続けていいこと、よくないこと

1つの会社で長くCTOを続ける、というのは賛否あるかと思いますし、ぼくの主観でも+/-両方あります。

もちろん会社はそれぞれだし、そこで時間とともに発生する変化の度合いも様々なので一概にどう、ということはありませんが、ぼくの視点で長く続けてよかったことを1つ挙げるとすれば、自分のやったこと、決めたことがちゃんと観察できる、という点です (まぁ勝手な話ですが)。前節で書いたこととも少し重複しますが、例えばサービスのアーキテクチャの選択が良かったのか、悪かったのか、もっと介入すべきだったのか、あるいはもっとミクロなところで自分のあの時書いたコードはどこが良くてどこが良くなかったのか、というのは時間とともに評価が変わり得るものですし、まぁ一般には長期的に良い評価が得られる選択をしたほうがよいでしょう、ということで、そういった自分の起こした行動へのフィードバックを長期に渡って得ようと思えば必然長く同じところにいる必要があるわけです (が、そもそもそのためには成果物が長く存在する必要があるので、難しいところではありますが)。あ、ソフトウェアだけに関して言えば、その観点では長くメンテナンスされているオープンソースソフトウェアは非常に興味深いですよね、と思うのですが、ちょっと話はずれるのでそれについては一旦置きます。

で、長く同じシステム、組織に関わることで、ある種安定...してるかどうかは怪しいですが継続したフィードバックサイクルを積み上げることができるので、それによってしか得られない成長、経験、というのはやっぱりあるものだなぁと考える昨今です、し、だからこそ今決めること、やること、書くコードが将来振り返っても悪くない、と思えるように、という意識を持ち続けるのが結構大事だなーと思っています (じゃないと、書いたような長くいることによって得られるメリットを台無しにしてしまうので)。

一方で当然ネガティブな側面も当然あって、それは上記の裏返しですが、いろいろなこと (仕事のやり方、考え方、最適化の方法、コミュニケーション、学ぶべきスキル、などなど) がその1つの会社のひと、組織、システム (ぼくでいえばグリー株式会社) に最適化されすぎてしまう、ということです。そうならないように、とは強く強く意識はしていますが、まずもって自分の考え方、やり方、経験がじゃぁ全然違うところでどれくらいの価値を持つのか、というのはわからないわけですし、違う言い方をすれば自分のやり方、セオリーの再現性、みたいなところの検証が相当やりづらい、というのはやっぱりマイナスだなーと思います。もっとシンプルに言えば、じゃぁぼくが明日違う会社のCTOになりました、というときに一体どれくらいの価値があるのか、パフォーマンスが出せるのか、というところが分からない、というのはとてもとても不安なことです (とりあえず不安に思い続ける、というのは大事だと考えてはいますが)。

合わせて、同じ会社に長くいると何をどうしても仕事をしやすくなっていきます。人間関係もある程度できているし、知っているひとも、会社としての仕組みも理解していることが多いし...ただそういったことは「この会社」でしか役に立たない (というとドライっぽいですが) ので、そこに依存したパフォーマンスに甘んじていると、それこそ違う環境で全く役に立たない人間になってしまうので、そうならないように足掻き続けなければと思う日々です。

まだコード書くのたのしい

ありがたいことに、まだまだやっぱりコードを書くのがとてもとても楽しく思える、というのは本当にありがたいことだな、と思います。

全くもってどなたの参考にもならないお話ですが、ぼくは10代前半のころ初めていわゆるプログラミング、というものにふれて、何故かは全くわからないままとにかく楽しくて仕方がないまま今に至っているので、正直なところいつ突然全く楽しめなくなってしまうのではないか、という不安は割とあったりします。理由もなく楽しいので、突然理由もなく楽しくなくなってしまっても不思議ではない...ってやつですね。

ただとりあえず今でもソフトウェアをつくっているのはとても楽しくて、それは大変うれしいことなのですが大きな問題が1つありまして、ちょっとしたもの以上のなにかを書き始めると、頭がそれでいっぱいになってしまって、もう暇さえあれば、いや、問題は暇じゃなくても「次あれを書こう」「あの部分はこう書いたほうがよかったのではー」などと考え続けてしまって仕事を疎かにしてしまいそうになるのです。うまくバランス取れるようになるとよいのですが、これについてはまだイマイチ解決策がありません、もっと大人になればいいのだろうなーとは思うのですが。

何にしても、60歳になっても、80歳になっても (なれるかな!)、楽しくコードを書いていたいものです、と切に願います。

時間をかけなければできないこと

とりあえず下書きで列挙したセクションタイトルのうち半分くらいは来たんですが、長くなったので一旦このあたりで...。なんかふわっとした話が多かったので、次はもうちょい小さい粒度のことを書こう、書くはず、ですたぶんおそらくきっともしかしたらううん絶対そう。

いずれにせよ、ここしばらく一番に意識しているのはシンプルに「長い時間をかけている、ということをどう優位性につなげるか」に尽きるかな、って話です。「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」っていうあれがありますが、じゃぁどうやったらより上手に歴史から学び続けられるか、他者の経験を自分のものにできるか、言うても経験が0でいってわけではないのでそれをどう選択するか、どう活かすか、そもそもそういった努力をどう継続するか、などです。

やーそれにしても、いわゆる社会人になってもうすぐ20年、結構長いことがんばってはきたものだなぁと思いつつ、厚生労働省発表の簡易生命表によるとあと40年くらいは生きるかもしれないらしいので、まだ先は長いなーと思います、ほんとに...。とりあえずあと40年がんばっていこう、と思いを新たにした次第です。

ということで

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